Eli's note from MILANO #7 『時代背景を知るともっと楽しい!イタリアのカーニバル』
遅くなりましたが、明けましておめでとうございます!
本年もインポート雑貨やイタリア・ミラノのライフスタイルについて幅広くお届けしていきますので、JIAS ONLINEならびにEli’s noteをよろしくお願いいたします。
年も明けてイタリアの長いクリスマスも幕を閉じ、冬のミラノの街はいつもの風景に。
次のお祭りはというと、2月から3月にかけてイタリア中の街で開催される華やかなカーニバル!
カーニバルというとなんとなく楽しげで、人によってはサーカスっぽいものをイメージするかもしれませんが、実はカーニバルはキリスト教の行事の一つ。
今回は、そんなイタリアの歴史あるカーニバルについてご紹介します!
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キリスト教の行事!カーニバルの語源は「謝肉祭」
カーニバルとは、キリスト教の伝統を持つ国々で行われているお祭り。
カーニバルの語源は、ラテン語のCARNEM LEVARE(肉を取り除く)という意味からきていて、日本語では「謝肉祭」と言われています。
4月に行われる「復活祭」の前の40日間を「四節句」と言い、この時期は禁欲と断食の期間になるので、その前に思いきり食べたり楽しもうというのがカーニバルの起源だと言われています。
仮面からオレンジの投げ合いまで、
地域によって異なるカーニバルの様子
イタリアでカーニバルといえば、華やかな仮面をつけて街を歩くヴェネツィアのカーニバルを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか?
しかし、他にもカーニバルの季節は各地域によって個性豊かなカーニバルが開催されています。
その中でも、イタリアで人気のあるカーニバルをランキング形式でご紹介!
1位 ヴェネツィアの仮面と衣装
やはり、1位はヴェネツィアのカーニバルですね。
ヴェネツィアのカーニバルは、世界で最も有名なカーニバルの一つ。
街そのものが世界遺産として登録されており、通常モードでも魔法の街と呼ばれる程ユニークで美しい場所に、妖艶な仮面とコスチュームで着飾った人々が集います。
一瞬で中世にタイムスリップしたかのような、不思議で魅力的な体験ができることでしょう。
訪問者は100万人規模と言われています(ここ数年はコロナ禍でオンラインイベントになっていたこともあったので、来場者数は通常開催の際のものです)。
2位 ヴィアレッジョのフロート
イタリア中部トスカーナ州の海沿いにある街Viareggio(ヴィアレッジョ)で行われる、巨大なフロート(山車)のパレードが華やかなカーニバル。
イタリアの各地で色々な物語などをテーマにフロートを作ってパレードするというカーニバルが多いのですが、ヴィアレッジョのカーニバルはその中でも歴史も古く、イタリア国内では非常に有名です。日本のねぷた祭りみたいですね。
3位 イヴレアのオレンジの戦い
イタリア北部ピエモンテ州のイヴレアという街のカーニバルはとてもユニークで、オレンジを投げ合って戦うというカーニバル。
中世の専制政治からの解放を求める民衆の反乱を再現しています。馬車に乗った暴君の軍勢が街をパレードしながら道ゆく民衆にオレンジを投げつけ、徒歩で戦う民衆チームは馬車に乗った兵士にオレンジで応戦するのです。
もちろんお祭りなので戦いは平和的に行われ、ギャラリーは少し離れたところから安全に見物することができます。
なんと毎年約600トンものオレンジが使われるそうです!
大衆娯楽としてのカーニバルの起源
テーマや物語をフロートで表現したり、歴史を再現したり、古くから続くこの季節の大切な行事であり、市民や観光客の楽しみでもあるカーニバル。
地域によって本当に様々な個性がありますが、やっぱり気になるのはイタリア人気1位のヴェネツィアのカーニバル。その歴史を少し深掘りしてみました。
ヴェネツィアのカーニバルの起源は古く、1094年に書かれた文章に「カーニバル」という言葉が登場しています。
ヴェネツィアの寡頭政治下によるカーニバルの制度は、一般市民(特に下層階級)に楽しみとお祭りだけに専念する短い期間を与えることが目的。
その期間はヴェネツィア人や他の地域の人々が街に押し寄せ、音楽と乱舞でカーニバルを楽しんでいたようです。
古くから素性を隠す道具として仮面が使用されてきたヴェネツィアでは
その仮面やコスチュームが保証する匿名性によってあらゆる社会的区分を一旦平等にし、権力者や貴族を公然と嘲笑することが許されたとのこと。
市民の公序良俗などに厳しい制限を設けていたヴェネツィア共和国において、必然的に生じる緊張や不満のはけ口と考えられていたと推測できます。
当時は厳しい階級社会だったので、一般市民は不満がいっぱいだったのですね。
華やかで謎めいた仮装の時代背景
仮面や衣装を身につけることで、自分のアイデンティティを完全に隠し、階級や性別、宗教などの個人的な帰属意識を排除することができたこの時代。
誰もが仮面をつければ大舞台の一部となり、役者と観客が一体となって、カーニバルを盛り上げていくようになりました。
寡頭政治であった時代背景の他にも、ヴェネツィアの立地や細い道の両側に隙間なく建てられた住宅等の建築物から、隣近所の距離が近くいつも人目を気にして生活していたのでは?と
当時のヴェネツィアの一般市民階級の人々はこのくらいしっかり仮装をし、やっと自分自身を解放できたのかもしれないなと想像します。
誰もが変化した外見に応じた態度や行動をとることができ、仮面をつけている時は、名前を呼ばず「こんにちは、仮面さん」という挨拶をしていたそう。
この集団的な変装の儀式に喜び勇んで参加することが、昔も今もカーニバルの本質です。
カーニバルで仮装する習慣が広まると、ヴェネツィアでは仮面や衣装の売買が盛んに。
1200年後半からは、仮面製作の記録や流派、製作技術などが残されています。粘土、貼り絵、石膏、紗など、素材を特殊加工する道具が作られるようになりました。マスクの土台を作った後、色を塗り、絵や刺繍、ビーズ、羽などで細部を充実させて作品を仕上げます。
イタリア語でマスケレリと呼ばれる、マスク職人は、より豊かで洗練されたスタイルとデザインの仮面を作る職人となり、ヴェネツィア国立公文書館に保管されている1436年の法令によって、正式にマスク職人という職業として認められました。
現在では、伝統的な職人が作る、ヴェネツィアンマスクは希少で、コレクターズアイテムになっています。
なんだか、この仮面やコスチュームの話は、現代のコスプレと通じるものがあるような気がして、今も昔も人々の楽しみ方には共通点があって興味深いですね。
18世紀以降〜現代まで着用される衣装「バウタ」
昔のカーニバル、特に18世紀以降に流行し、現代のカーニバルでも着用される変装の代表的なものは、バウタと言われるヴェネツィアの代表的な衣装。
黒い三角帽の下にバウタと呼ばれる白いマスクをつけ、タバーロと呼ばれる暗いマントで仕上げたものです。
バウタはカーニバルの期間だけでなく、劇場や他のお祭りでも使用されたそう。
昔は階級による問題で自由な恋愛が許されていなかった事もあり、お祭りなどの際にマスクを使って匿名性を確保しながら恋愛を楽しむといった事も多かったよう。
そんな時代背景で生まれたバウタは完全な匿名性を保証して広く使用され、顔に装着するマスクの形状を工夫する事で、マスクを外さずに飲んだり食べたりできるような作りにしたそうです。
カーニバルの伝統的なスイーツ「キアッケレ」
カーニバル期間中に登場するのが、Chiacchiere(キアッケレ)と呼ばれるお菓子。
キアッケレとは「おしゃべり」という意味で、
ワインのおつまみやカフェタイムにワイワイみんなでおしゃべりしながら、楽しく食べるイメージです。
基本の材料は、小麦粉、砂糖、バター、卵、柑橘類の皮、ラム酒等で生地を作り、薄く伸ばしてオイルで揚げ、粉砂糖をまぶすという、サクサク食感の揚げ菓子になります。すでに写真からいい匂いがしてきそうです...!
そんなキアッケレは、イタリアのほぼ全ての地域で非常に古い起源と異なる名前を持っています。
例えば、Crostoli(クロストリ), Frappe(フラッペ), Bugie(ブジーエ), Cenci(チェンチ)などなど全部紹介するとキリがないのでこの辺にしておきますが、地域によっていくつもの呼び名があり、形は色々ありますが全て同じお菓子を意味します。
イタリアだけでなく、ヨーロッパ各地で一般的にこの時期に食べられているお菓子だそうです!
街中で楽しむカーニバル期間
カーニバルの期間中は、ヴェネツィアのすべての主要広場で行われるお祭り、ショー、豪華な衣装で仮装をする人々などでとても華やかです。元々ヴェネツィアの街の全てが旧市街、非日常的なほど数百年前の面影を残しているので、タイムスリップしたような、古い映画の世界に迷い込んだかのような、実に不思議で面白い感覚に浸ることができます。
この期間中に道を歩いていると、紙を細かく切った紙吹雪のようなものを不意に投げつけられることが。
はじめてカーニバルのヴェネツィアを訪れた際、その作法を全く知らなかった私はとても驚いたのが印象に残っています。これは相手をびっくりさせる典型的ないたずらで、この期間中は、歩道が紙吹雪だらけになっています...!
今年のヴェネツィアのカーニバルは、2023年2月4日から21日まで。
ただでさえ幻想的で美しい水の都ヴェネツィアの街に、思い切り豪華なコスチュームを纏った人々で賑わうカーニバルは一瞬で異空間に移動したかのような非日常を楽しめる、贅沢な体験となるでしょう。自分も仮装して参加するのも良いですし、その場にいるだけでも特別な時間を感じることができます。
今回は、ヴェネツィアのカーニバルについて詳しく紹介しましたが、
イタリアの多くの街でカーニバルがあり、期間やプログラムはそれぞれ設定されています。
まだ少し寒い季節ですが、カーニバル時期の街は活気が溢れ、地元の人も観光客も一緒にお祭りを楽しめて、賑やかになります。
いつもより、地元の人と交流できる機会が増えて、きっと一味違う旅になると思います。機会があったらぜひ体験してみてください!
ではまた次回。