
トレヴィーゾ便り #8|イタリアの「甘く冷たい芸術」Gerato(ジェラート)
みなさんこんにちは。トレヴィーゾ在住のミナミです。
イタリアでは太陽が輝き、連日30度を超える真夏日が続いています。
日本では各地で猛暑と聞いていますが、いかがお過ごしでしょうか。
ところで、イタリアを旅する上で、ジェラートはもはや外せない存在です。
この「甘く冷たい芸術」は、イタリアが世界に誇る食文化のひとつです。
今回は、そんなイタリア発祥のジェラートについて、歴史や特徴、現地での楽しみ方、そして私のおすすめのお店まで、たっぷりとご紹介します。
ぜひ最後までご覧いただけると嬉しいです!
※「gelato」はイタリア語で「凍った」という意味の形容詞。動詞「gelare=凍る」の過去分詞。
ジェラートの起源
ジェラートの起源は非常に古く、そのルーツは古代ローマ時代にさかのぼります。
当時のローマ人たちは、アルプスの雪や氷を山から運び、果汁やハチミツを混ぜて冷たいデザートとして楽しんでいたと伝えられています。
現在のようなクリーミーで滑らかなジェラートが誕生したのは、ルネサンス期のイタリアです。
16世紀、フィレンツェの貴族メディチ家に仕えていた、建築家であり料理人でもあったベルナルド・ブオンタレンティが、ミルクや卵、ハチミツを使った冷たいクリーム菓子を作ったのが始まりとされています。
彼は氷と塩を使って食材を冷やす技術を改良し、「冷製デザート」という新しいジャンルを生み出しました。
その後、ジェラート文化はイタリア各地へと広がります。
特に大きな転機となったのは18世紀。
ナポリのフランチェスコ・プロコピオが、パリに「カフェ・プロコプ」を開店したことで、ジェラートはヨーロッパ中に知れ渡ることになります。
プロコピオは、初めて機械を使って氷菓を作り、庶民にもジェラートを提供できるようにした人物として知られています。
現代のジェラートは、私たちがよく知るアイスクリームと比べて乳脂肪分が少なく、空気の含有量も少ないため、より濃厚でなめらかな口当たりが特徴です。
地域や店によってレシピやフレーバーも異なり、まさに「その土地の味」を楽しめる、アートのような存在といえるでしょう。
イタリアでは今でも、地元の素材を活かした手作りジェラートが深く愛されており、観光地はもちろん、地元のジェラート屋さんも人々で賑わっています。

ローマ空港内にある、人気のジェラート屋さん「Venchi」。
壁面には、アートのようにジェラートのオブジェが飾られています。

Venchiは、店舗のほかに、移動式のワゴンでもジェラートを販売しています。
ジェラートの特徴
ジェラートは、アイスクリームよりも高めの温度(−10℃〜−15℃程度)で提供されるため、その口どけは格別。
口に入れた瞬間スッと溶け、素材本来の豊かな香りや味わいが口いっぱいに広がります。
伝統的にジェラートで使われるのは、フルーツ、ナッツ、チョコレートなど、ナチュラルで新鮮な素材ばかり。
特に、フルーツ系のジェラートは、果肉や果汁が惜しみなく使われており、 素材そのものの美味しさを存分に引き出し、食べる人をとりこにします。

こちらは、イタリアのジェラート屋さんでよく見られるメニューです。
各フレーバーに写真が添えられており、イタリア語がわからなくても、どんなジェラートなのか一目瞭然です。
ジェラートの種類は、大きく分けて2つあります。
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ミルク系(Latte):ミルクをベースとしたフレーバーで、チョコレート、ナッツ、コーヒーなどの種類があります。
濃厚でクリーミーな味わいが特徴です。 -
フルーツ系(Sorbetto):いちご、レモン、マンゴー、ピーチなど、旬のフルーツをふんだんに使ったフレーバーです。
こちらは乳製品を含まないことが多く、果物本来のフレッシュな美味しさを存分に楽しめます。

ジェラート屋さんでの注文方法

1.列に並ぶ:まずは、行列ができていればそこに並びましょう。
2.サイズと容器を選ぶ:順番が来たら、カップ(coppa)かコーン(cono)を選び、食べたいジェラートの数に合わせて大きさを伝えます。
サイズは「ピッコロ(小)」「メディオ(中)」「グランデ(大)」などがありますが、お店によっては「S・M・L」などのわかりやすい表記にしています。

3.フレーバーを選ぶ:メニューやショーケースに並んだジェラートを見ながら、指をさして注文したいフレーバーを伝えましょう。
多くのお店では、小さいサイズでも2種類以上のフレーバーを選ぶことができますよ。
私の定番はチョコレートとミルクの組み合わせです!

4.受け取りと支払い:店員さんがジェラートを盛り付けてくれます。
ほとんどの場合、支払いは、ジェラートを受け取った後に済ませる「後払い」です。
私の定番の組み合わせであれば、だいたい3ユーロ(520円)ほどです。

活気あふれる店内で、オーナーさんとおすすめのジェラートについて話したり、何気ない世間話をしたり…そんな楽しい時間が流れています。

イタリアでは、驚くことに小さな子どもでも、大きなコーンでジェラートを食べている姿をよく見かけます。
手や口をベタベタにしながらも、美味しそうに頬張る姿は、イタリアの日常風景です。

イタリアでは、夏の夜には深夜1時ごろまで営業している小さなジェラート屋さんを見かけることも珍しくありません。
ジェラートは、イタリア人にとって食後のドルチェ(デザート)としても深く愛されています。
ディナーのあとに、家族や友人とジェラートを味わうのが、夏の定番の過ごし方のひとつとなっています。
イタリアのおすすめジェラート屋さん5選
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Ciacco(チャッコ) -ミラノ
ミラノのドゥオーモ地区にひっそりと佇む、10年以上の歴史を誇る名店「Ciacco」。
この店で特筆すべきは、単に美味しいだけでなく、乳製品や小麦アレルギーの方にも心ゆくまでジェラートを楽しんでもらえるよう、豊富な種類のジェラートを用意していること!
誰もが笑顔になれる、優しい心遣いが光るジェラート屋さんです。伝統と革新が融合した、ミラノらしい洗練された味わいをぜひお試しあれ。
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DASSIE(ダッスィエ) -トレヴィーゾ
地元トレヴィーゾで長年愛され続ける、家族経営のアットホームな人気店「DASSIE」。
こだわりは、徹底した素材選びにあります。
特に注目は、ルピナス豆を使ったヴィーガンジェラート!乳製品を使わずに、驚くほどなめらかで濃厚な味わいを実現しています。
さらに、マダガスカル産バニラなど、世界中の高品質な素材を惜しみなく使うことで、他では味わえない極上のハーモニーを生み出しています。
最近ではミラノにも出店し、その美味しさがさらに話題を集めていますよ!
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Gelateria Dondoli(ジェラテリア・ドンドリ) -サン・ジミニャーノ
絵画のように美しい中世の街、サン・ジミニャーノでひときわ輝く「Gelateria Dondoli」。
なんとこのお店、世界ジェラート選手権で何度も優勝という輝かしい実績を持つ、まさに「ジェラートの殿堂」!
ここでしか味わえないのが、「バジル&松の実」や「サフラン&松の実」といった、想像を超える個性的なフレーバーの数々。
一口食べれば、その独創性と繊細な味わいに、きっとあなたも驚きと感動を覚えるはず。
ジェラートの常識を覆す、芸術的なひとときをぜひ体験してみてください。
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La Carraia(ラ・カライア) -フィレンツェ
フィレンツェを流れるアルノ川沿いに位置し、その美しいロケーションと驚きのコストパフォーマンスで絶大な人気を誇る「La Carraia」。
観光客だけでなく地元の人々にも愛される秘密は、その濃厚で満足感たっぷりのジェラートにあります。
特にティラミスや塩キャラメルといったクリーミーなフレーバーは絶品!とろけるような口どけと、素材の豊かなコクがたまらない逸品です。
散策の合間に、本場の美味しさを手軽に味わってみてはいかがでしょうか。
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Otaleg!(ローマ)
店名が"Gelato"を逆から読んだ遊び心あふれる「Otaleg!」。
その名前の通り、既存の概念にとらわれない革新的なスタイルでジェラート界に新風を巻き起こしている注目のお店です。
ここでは、ショウガやブルーチーズなど、一見「え?」と思うような挑戦的なフレーバーが次々と生まれています。
しかし、ひと口食べればその絶妙なバランスと、素材が織りなす奥深い味わいに魅了されること間違いなし。
常に新しい発見と驚きを求めるあなたにぴったりの、ローマの最先端ジェラートをぜひお楽しみください!
【番外編】シチリア島名物の「Granita(グラニータ)」

シチリア島を訪れるのなら、ぜひ試してほしい朝食があります。
それは、たっぷりの生クリームを添えたコーヒー味のグラニータと、ブリオッシュです!
グラニータとは、イタリアのシチリア島発祥の伝統的な氷菓。
果汁や水をベースに砂糖を加えて凍らせたもので、粗めのシャーベットのようなシャリシャリとした食感が特徴です。
日本の「かき氷」にも似ていますが、その口どけはさらに繊細で、ひと口食べればシチリアの太陽を感じさせるような爽やかさが広がります。
特に、このコーヒー味のグラニータは格別。苦みと甘さの絶妙なバランスが、朝の目覚めにぴったりです。
そして、そこに添えられた軽やかな生クリームが、グラニータの冷たさと溶け合い、まろやかなハーモニーを生み出します。
さらに、温かいブリオッシュをちぎって、この冷たいグラニータに浸して食べるのがシチリア流!
ひんやりとしたグラニータと、バターが香る柔らかなブリオッシュの組み合わせは、まさに至福のひととき。
シチリアの朝を彩る、忘れられない味になることでしょう!
ジェラートから見えるイタリア文化
イタリア人にとってジェラートは、単なる冷たいスイーツの枠を超えた、特別な存在です。
それは、日常生活に深く根ざした、かけがえのない文化のひとつと言えるでしょう。
家族との散歩中にふらりと立ち寄る場所であり、学校帰りの子どもたちが自然と集まる、賑やかな集合場所でもあります。
また、大人同士が気軽に言葉を交わし、おしゃべりを始めるきっかけとなる、コミュニティの場でもあるのです。
行列をあまり好まないイタリア人が、唯一といっていいほど辛抱強く列に並ぶのが、このジェラート屋さん。
それほどまでに、彼らにとってジェラートは欠かせないのです。
旬の素材やその土地の恵みを大切にし、手間暇を惜しまない手作りの味を守り続ける姿勢。
それはまさに、イタリアの食文化の核であり、彼らの暮らしの豊かさを象徴していると言えるでしょう。
ジェラートを味わうことは、イタリアの文化そのものを体験することなのです。
おわりに

イタリアの街を歩いていると、ふとした瞬間にどこからともなく漂ってくる甘い香り。
その香りに誘われるまま進んでいくと、そこには必ずといっていいほど、地元に愛されるジェラート屋さんがあります。
ガイドブックに載っていないような小さなお店であっても、そこで出会えるのは、素材への深い愛情と、職人の確かな技術が光る、とっておきの味わいです。
ジェラートは、単なる冷たいスイーツではありません。
そのひと口には、イタリアの豊かな風土、移りゆく季節の恵み、そしてジェラートから生まれる人々のあたたかいふれあいがぎゅっと詰まっています。
イタリアを訪れる際には、ぜひお気に入りのジェラートを見つけて、心ゆくまでその魅力を堪能してください。
それではみなさん、Buona estate!(良い夏を!)