Eli's note from MILANO #4 『旬を味わうイタリア、秋の味覚と食文化』
イタリアミラノ在住、インポート雑貨担当バイヤーのEliです。
ミラノも一気に秋めいて、とても過ごしやすい季節になりました。
日本と同じく四季があるイタリア。季節の食材がスーパーやストリートマーケットなどにずらりと並び、そこで次の季節の訪れを感じます。
今回は美味しそうなもので溢れているミラノから、イタリアの「食」についてご紹介いたします!
秋のイタリアは、グルメ!イタリア人にとってのポルチーニ茸
イタリアでは秋になるとキノコや栗など山の食材がずらりと並びます。栗は形も味も日本のものと変わらず、焼いたりデザートに使ったりと食べ方も同じです。
日本でも一度は聞いたことがある方も多い「ポルチーニ茸」は、秋の味覚としても人気のイタリアを代表するキノコ。味にクセがなく、濃厚な風味が特徴です。
様々なパスタやリゾット、ステーキの上に乗せたり、そのまま焼いて食べても美味しく、どんな料理にも相性の良い万能キノコです。
ポルチーニ茸の豆知識で言うと、「ポルチーニ」とはイタリア語で子豚(複数形)という意味。
この名前の由来には諸説あり、ポルチーニ愛好家が多いイタリアではいつも物議を醸しています。有力な2つの説の一つ目は「見た目が丸くて子豚のようだから」、二つ目は「以前は野生で飼育されていた豚が好んでいたキノコだったから」というものがあります。
イタリアでのポルチーニ茸の人気は、この時期になるとローカルTV番組などのニュースで「珍しい形のポルチーニが発見された、すごく大きなサイズのポルチーニを発見」などと毎年放送されているほど。
イタリア人のポルチーニ愛には、美食大国と言われるイタリアの人々の食べ物に対する情熱の高さを感じますね。
バラエティ豊かな郷土料理から成り立つイタリア料理
▲左からナポリのピザ、ベネチアのイカスミパスタ、シチリアのガンベロロッソ(ブランド海老)、トスカーナのフィオレンティーナ・ビステッカ(フィレンツェ風ステーキ)
イタリアには、それぞれの地域に伝わる郷土料理があります。
ミラノ料理、トスカーナ料理、ローマ料理、サルデニア料理、シチリア料理など、様々な郷土料理のレシピがあり、それらを全部まとめてイタリア料理と呼びます。
南北に長いイタリアは、地方によって気候がかなり異なるため、南イタリアなど海が近い地域のレシピは魚料理が有名で、ミラノのような北イタリアはアルプス山脈が近く比較的寒い地域のためお肉の煮込み料理などが多くなります。
ミラノ料理の店では、カルボナーラは食べられない?
前述したように様々な郷土料理から成り立つイタリア料理は、
レストラン側も「どこの地方のレストランであるか」というのを明確に打ち出しているところが多く存在します。
そのため、パスタと言ってもその地域でよく使われるものがあったり、ソースの作り方やレシピが全然違ったりと、その地域の郷土料理のレストランでしか食べられない名物メニューがあったりするのです。
例えばパスタ・カルボナーラはローマ料理なので、ミラノ料理のお店のメニューにはありません。
カルボナーラが食べたい場合は、ローマ料理の店にいく必要があり、美味しいピッツァが食べたければ、ナポリのピザ屋さんに行くというのがイタリア流になります。
日本で「イタリア料理を食べに行こう!」となると、多くのレストランではカルボナーラからペペロンチーノまで種類豊富なパスタ〜ピッツァ、全ての地域のイタリア料理を堪能できるイメージですよね。
しかしイタリアではそのような考え方ではなく、「今日はお肉料理が食べたいからトスカーナ料理のレストランに行こう」などといったように、食べたいメニューはどこの地域の郷土料理であるか、という知識を前提にした会話が繰り広げられるのが日常的です。
(観光地の中心にある、観光客が多いレストランなどでは満遍なく定番の人気料理が全てメニューに入っていたり、ヌーベルキュイジーヌなどのモダンなレストランは郷土料理とは関係なく、独特なメニューがあったりすることもあります。)
では「郷土料理」という既に確固として存在する料理には季節感などは無いのか?と思ってしまいそうですが、
ちゃんと基本となる郷土料理のレシピに季節の食材が加わり、シーズン毎にバラエティに富んだメニューを楽しむことができます。
やはり旬の食材は、季節を楽しむ醍醐味のひとつですものね。
距離が近くても全く違う文化?イタリア郷土料理の歴史的背景
イタリアは4世紀のローマ帝国滅亡後、長い間小さな国に分裂し、それぞれ別の都市国家として発展、1861年にイタリア王国が成立。
そこから1946年に国民投票により王政が廃止され、現在のイタリア共和国となったのは1948年であるため、地域によって全く違う食文化を持っています。
日本でも同じように、地域によって異なるアクセントや方言がありますよね。
関東地方から見れば、距離のある関西や東北などは地域によってはかなり違うアクセントや方言を感じますが、首都圏など近い距離間であればその違いをほとんど感じることもなく、あまり変わらないように思います。
しかしイタリアでは、車で1時間程度の近隣の街に移動するだけでもかなり違うアクセントを使っていたりするのです。
方言においては挨拶も全然違ったり、完全に方言だけで話すとほとんど理解できない...なんて地域も。
地域によってガラリと建物の様式も変わったりと、「以前ここは別の国同士だったのだ」という歴史が現在でも感じられて、それぞれの郷土料理にはっきりとした特徴があることにも納得。
少しドライブするだけでも違う文化を楽しむことができるので、とても面白いですよ。
イタリアの少しリッチな秋の味覚、「北イタリアのトリュフ」
イタリアの秋の味覚は冒頭でお伝えした通り定番のものもありますが、今回は10月の時期(まさに今!)に楽しみにしている人が多い、北イタリアのトリュフについてご紹介します。
トリュフの産地はいくつかあるのですが、北イタリアで一番有名なのがピエモンテ州のアルバという地域です。ここでは毎年秋になるとイタリアの最大の美食イベントの一つである、白トリュフ祭り(Mercato Mondiale del Tartufo Bianco)というなんとも美味しそうなお祭りが開催されます。
毎年10月初旬から12月初旬まで行われており、世界中の美食家やプロの料理人などがトリュフを買いに訪れます。
そのアルバ市内の歴史地区で行われている白トリュフ祭り会場や周辺のレストランでももちろん、トリュフをふんだんに使った料理を味わうことができます。
白トリュフ、黒トリュフの違い
世界三大珍味でもあり、日本でもすっかりお馴染みのトリュフ。
代表的なものとしては、白トリュフと黒トリュフと呼ばれるものがあります。実際は白と黒だけではなく他の色のものもあり何十種類もあるそうですが、今回は白と黒について簡単にご紹介いたします。
白トリュフの旬は短く、秋から冬にかけてのみ。黒はサマートリュフと呼ばれる夏から秋に旬を迎えるものから、秋から冬にかけてが食べ頃になるものもあります。
黒トリュフは、イタリアをはじめスペインやフランスなどでも収穫されますが、白トリュフはイタリアのアルバ周辺だけで採れるそうです。
黒トリュフに比べて白トリュフは香りが強く、収穫できる数が少ないので、希少価値が高くとても高価で取引されています。
割とよく見かける黒トリュフに比べて白トリュフがあまりでまわらないのは、白トリュフの産地が限定されていることと、収穫後香りや水分が失われるのが早いので、生の状態で保存できる期間が10日程しかないからだそうです。
旬を味わいつくす!本当においしいトリュフの食べ方
この時期にしか味わえない希少なトリュフの定番の食べ方は、生のまま薄く削って、シンプルな目玉焼きやパスタの上にかけたもの。ただただトリュフの香りを存分に楽しみながら食べます。
アルバで白トリュフと一緒に食べる時の定番パスタは、Tajalin(タリヤリン)という平打ちのロングパスタ。エクストラバージンオリーブオイル、ニンニク、バターと塩だけで味付けされ、そこに白トリュフをかけたシンプルなもの。まさにトリュフの香りを味わうためのパスタです。
新鮮な白トリュフがふわっとエレガントに香り、官能的な素晴らしい風味。
上質な素材だけを使った、繊細で洗練されたお味です。
レストランによっては、イタリア名物のポルチーニ茸や他のキノコの上から白トリュフをかけてキノコを味わい尽くす贅沢なもの、卵黄とトリュフをダブルでのせて濃厚な味と香りを楽しむなど、様々なメニューや楽しみ方があります。
トリュフのお供には、ピエモンテの赤ワイン
このピエモンテのアルバというエリアはトリュフと同じくワインの産地としても有名。
赤ワインの王様と呼ばれるバローロなどの有名なワインをはじめ、多くの素晴らしいワインを作っています。
街の中心から少し離れると、ワイン畑が広がり、イタリアの秋らしい景色も楽しむことができます。秋の味覚と切り離せないワインですが、イタリアのワインについては奥が深いのでまたの機会に。
おわりに
いかがでしたか?今回はイタリアのポルチーニ愛から郷土料理事情、アルバの白トリュフ祭りまで、イタリアの秋の味覚と共に「食」の魅力を特集してみました。
書いていてお腹が空いてきましたが、イタリアの秋の雰囲気とトリュフの香りを少しでも感じていただけたら嬉しいです。
この季節にしか味わえないものを堪能したいと思う気持ちは、世界共通。
みなさまも是非、季節の食材で秋を楽しんで下さいね!
ではまた次回。