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バカンスを連想させる海と砂浜

Eli's note from MILANO #2 『ミラネーゼとバカンス』

イタリア・ミラノ在住、インポート雑貨担当のエリです。

日本には一足早く夏が訪れて、とても暑い日が続いているとニュースで拝見しております。

ミラノも同じく暑いので、ジェラート屋さんの前を通るたびにジェラートで涼をとりながら夏を楽しんでいます。

・ミラノの夏支度「バカンス」

バカンスを想像させる海と砂浜

ミラノの夏といえば、バカンス。

夏支度は旅行の計画を立てることから始まります。

夏休み前のこの時期になると、この夏はどこにいくかという話題でもちきり。
もうこの話しかしていないと言っても過言ではないと思うくらい、とても大切なイベントです。

 

学生の夏休みは6月から始まり3ヶ月半程。

大人も2週間から4週間くらい夏休みを取るのが一般的です。
日本では普通に働いていたら

「2〜4週間も休み!?」

と驚かれそうですが、イタリアでは年間4週間の有給休暇が定められているので、夏にまとめて取ったり、冬と半分ずつに分けたりして休暇を取ります。

また、8月15日はFerragosto(聖母被昇天祭)というキリスト教の祝日なので、この前後に休む人が多いです。

日本のお盆やお正月の三が日のような感覚に近く、この時期に休暇を取るというのは慣習としてしっかり根付いています。

 

そのため多くの企業もスタッフたちが「休暇中でこの時期に通常通りのサービスはできない」というのは理解しており、
そのサービスを普段受けているお客さんもみんな

「バカンスシーズンだから」

「夏は休暇取るよね」

とお互いに理解しているところが日本と大きく違う点です。

 

私が暮らすミラノのような都市部では、7月末から8月末までの時期はまるでゴーストタウンのように街から人がいなくなり、静まりかえります。何故なら、

「バカンスだから。」

 

人々はそれぞれバカンスに行くので、多くの商店やレストランは夏季休暇で閉まってしまうのです。

気合い入れすぎじゃない?と思うかもしれませんが、夏を全力で楽しむイタリアの人々にとってバカンスは、それくらい「絶対的」なイベントなんです。

 

では、そんなミラノの人たちはどのような場所で夏を過ごしているのでしょうか?

今回はミラネーゼの「バカンス」について、その歴史も含めてお話ししましょう。

(ミラノの人をイタリアではミラネーゼと呼びます。東京出身の人を江戸っ子と呼ぶような感じです。今回はイタリア流にミラネーゼと表記します)

 

・バカンスの過ごし方、日焼けは充実した夏を過ごした証

ビーチリゾート

まず、ミラノには海がない(!)からか、ビーチリゾートが好まれる傾向があります。

トレッキングや湖で過ごすのが好きだという人も沢山いますが、ミラネーゼの5割以上は夏休みをビーチリゾートで過ごすという統計があります。

ミラネーゼの夏休みのポイントは、美しいビーチと食事やナイトライフが楽しめる場所であること。日中はビーチで本を読んだり少し泳いだりしてゆっくりリラックス、しっかり日焼けをします。

日焼けは、充実した夏を過ごした証。
夏休み明けにミラノの街に戻った時に、美しく日焼けした姿を披露するのです。

夏の夜を思わせるお酒の入ったグラス越しに海の写真

夜は昼間とは対照的に少しアクティブ。

しっかりドレスアップしてラウンジ、バーなどでお酒を飲んだり、ライブミュージックのイベントやクラブに行ったりして夜中まで思いきり楽しみます。

1日というよりは、その期間をめいっぱい楽しむバカンス。
短い滞在でいろいろな街をまわるような過ごし方はせず、一つの場所に長めに滞在して思いきりリラックスして過ごすのが一般的です。

日本で言うと「避暑地の別荘でゆっくりと長期間過ごす」といった感覚に近いのかもしれません。


さて、そんなミラネーゼに人気のビーチリゾートには年代ごとにトレンドがあるのも特徴的。

イタリアにはアマルフィー海岸、サルデーニャ島、シチリア島をはじめ他にも世界屈指のビーチリゾートが沢山あり、世界中から多くの観光客が訪れます。

基本的にそれらの場所は安定して大変人気がありますが、その他にミラネーゼの若者世代が好んで夏休みに訪れる場所には年代ごとにトレンドがあるのです。

 

・ミラネーゼのバカンストレンド史

では具体的にどのようなトレンドを辿ってきたのか、80年代まで遡って見てみましょう。

・80’s:定番スタイルを楽しむ、穏やかなアドリア海のビーチ

エミリアロマーナ州のリミニ海岸のにぎわうビーチ風景

1980年代の傾向としては、ミラノから東に車で数時間で行くことのできる、エミリアロマーナ州のリミニ海岸周辺エリアが大人気でした。

常に穏やかで遠浅のアドリア海のビーチで日中を過ごし、地元の名物料理を堪能。

ローマ時代の古代遺跡の残る旧市街で散歩したり、夜はディスコで楽しむという典型的な夏休みのスタイルはこの頃からの定番だったようです。

少し遠くへ行きたいグループには、スペインの南部アンダルシア州のコスタ・デル・ソルの方もとても人気がありました。

1950年代からヨーロッパの夏の観光地域として知られるようになった太陽海岸と呼ばれる地中海沿岸の最南、コスタ・デル・ソルへ車で旅をするのは、イタリアの北の地域に住むミラネーゼにとっても長年憧れの旅先だったのです。


・90’s:パーティー・アイランドで賑やかなナイトライフ

海辺でにぎやかなナイトライフを過ごす人々

1990年代に入るとスペインのバイアレス諸島の人気が爆発します。
バイアレス諸島とは、スペインの東部沖、地中海に浮かぶ5つの島で構成された島々のこと。

特にパーティー・アイランドとしても有名なイビサ島は、有名なクラブやディスコで音楽やパーティーを楽しむ人々で大賑わい。

ナイトライフだけでなく、美しい自然とのんびりとした島の雰囲気も楽しむことができるこのエリアは不動の人気リゾート地となりました。

他には地中海沿いのスペイン東部のコスタ・ブラバもホテルなどが開発され、多くのミラネーゼも好んで訪れました。 


・20’s:美しい自然も堪能、バランスの取れたフォルメンテーラ島

フォルメンテーラ島の海

2000年代にはイビサからフェリーで30分程の場所にある小さな島「フォルメンテーラ島」に注目が集まりました。

イタリアにいるのかと錯覚する程、あちこちからイタリア語が聞こえてくるフォルメンテーラ島。

パーティーとナイトライフで大賑わいしているイビサ島から、もう少し静かに美しい自然を堪能できて、ナイトライフもバランス良く楽しめるこの島に滞在するミラネーゼが増えました。

また、この頃のイタリア国内では、今まで観光地としてはあまり注目されていなかったプーリア州の南側サレントエリアの人気が急上昇。

それまで国外ではスペインの人気がとても高かったのですが、2010年代になると「イタリアからすぐ隣の国で美しい海を楽しめる」ということでクロアチアがお気に入りの場所にニューエントリーします。


こうして見ると、海のない街で暮らすミラネーゼが求めるバカンスの要素は基本的には変わらない中で、時代と共に人気のエリアが少しずつ変化しているようです。

なぜその場所が流行したのか、その時代にどのようなことが起きていたのか、例えばどんな音楽や映画が影響しているのかなど想像が膨らんで、とても面白いですね。



・2022年のバカンスはどうなっていく?

クロアチアの海

2020年以降はコロナ渦の渡航制限などの影響で、約8割の人がイタリア国内で過ごしました。

世界中から来る観光客で溢れかえるイタリア高級ビーチリゾートが、普段より外国人観光客の数が少なかったためイタリア国内旅行を存分に楽しめたということも背景にあります。

以前は毎晩のように行われていた音楽のライブイベントやパーティーが減少したので、ナイトライフで有名な島も以前のような盛り上がり方ではなく、落ち着いた雰囲気となっていました。

2022年の今年はまだ知られていないようなギリシャの小さな島で自然を満喫したりして、ゆっくりと過ごしてみたいと思っている人が多いようです。



・おわりに

リゾートやバカンスを思わせるジュース

暑い夏は日常から離れ、長期休暇を存分に楽しんでリフレッシュするというのがミラノの人々の典型的な夏の過ごし方。

みんなしっかりとエネルギーをチャージして新年度を迎えるので、9月はミラノの街も人も活気に満ち溢れています。

長距離移動がなかなか難しい近頃ではありますが、また色々なところに行けるようになるといいですね!

 

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