Eli’s note from MILANO #12『Maison & Objet(メゾン・エ・オブジェ)2023 秋 最新レポート』
こんにちは!
イタリア在住、インポート雑貨バイヤーのEliです。
こちらはやっと暑さも落ち着いてきて、ひと雨降るごとに少しずつ気温が下がり、秋らしい気候になってきました。
イタリアの9月は新学期の始まり。大人も子供も夏休みにしっかり充電し、この時期は人も街もエネルギーに満ち溢れています。
ヨーロッパ諸国ではインテリアデザインやデコレーション、ファッションの分野でも、色々なイベントが始まりました。
その中でもパリで9月最初に開催されたイベント「Maison & Objet(メゾン・エ・オブジェ)」の最新レポートを、ボリューム満点でお届け。
今年もインテリアトレンドの見どころがたくさんありました!
Maison & Objetとは?
「Maison & Objet(メゾン・エ・オブジェ)」は、フランスのパリで開催される、インテリアデザインやライフスタイルに関する世界最大の展示会の一つ。
デザイン業界、インテリア業界、アート、家具、照明、テキスタイル、ホームアクセサリーなど、幅広い分野からの専門家やデザイナー、メーカー、バイヤー、コレクター、メディア関係者などが一堂に集まります。
出展者は最新のデザインプロダクトやコレクションを発表し、新しいインテリアデザインとライフスタイルのアイデアを発信します。専門家によるセミナーやデザインアワードも充実し、インテリアデザインのトレンドを発信する重要なイベントです。
通常は年に2回(1月と9月)、およそ5日程開催されます。
今シーズンは2023年9月7日から11日まで、パリの中心部から少し北側にあるパリ・ノール・ヴィルパント見本市会場で開催されました。出展者は約150カ国から2,500のブランドが参加し、そのうち全体の約30%(750ブランド)は新規ブランドだったそう。
今年9月の来場者数はまだ発表されていませんが、前回(2023年1月)は約67,000人もの人々が訪れました。
今年のMaison & Objetの開催期間は、9月らしからぬ真夏日のような(35度超え!)良いお天気でした。
9月展のテーマは、
ENJOY: In Quest of Pleasure「エンジョイ:喜びを求めて」
まずは今回のMaison & Objet 2023秋のテーマを考案した、パリのコンサルティング会社 Peclers Paris(ペクレール・パリ)の手がけた「INSPIRE ME(インスパイア・ミー)」フォーラムからご紹介。
今年のテーマやトレンドのインスピレーションをキャッチしましょう!
自身の「喜び」を重視し、多様な「幸福」を追求する
今回の「喜びを求めて」というテーマの背景には、目まぐるしく変化し、不安の多い生活の中、より豊かで幸福な生活を送りたいという願いがあります。
従来の「ウェルビーイング(健康・幸福感)」と同義視されてきた「幸福」に対する定義は、一部の人々にとって制約的に感じられるようになりました。そうしたことに少しの窮屈さを感じるようになった人々は、自身の「喜び」を重視し、多様な「幸福」を追求できる社会を築くことを目指しています。
人々の関心を象徴する、3つのペルソナ(個人像)
この新たな「喜びの追求」のアプローチには、さまざまなペルソナ(個人像)が存在し、その代表的なモデルを3つのグループに分けて紹介されていました。
それぞれのグループが追求する「喜び」には異なる要素があり、それを体現するような環境が提案されています。各グループのライフスタイル、美意識、興味関心、住居のインテリアなどが含まれ、展示を通じて体験できるようになっていました。
・The Festive Decadents 華やかな贅沢主義者
"To be an actor in a life of exalted pleasures" 人生はステージ
・The Collective Optimists 共感的な楽観主義者
“Reconnecting with the joy carefree play” 無邪気な遊び心
・The Sensitive Hedonists 感覚的な快楽主義者
"Happiness is harmony" 幸福とは調和
この展示では、3つの代表的なペルソナが「喜び」を象徴するアイテムやキーカラー、マテリアルで表現されていました。それぞれのライフスタイルや美意識を体感できる、とても興味深い内容でした。
展示を通じて、今後のトレンドや、将来の人々の関心がどの方向に向かうのかについて、なんとなく理解が深まったように感じました。
公式HPでは、バーチャル空間でこちらのエリアを体感することができますので、是非この世界観を体感してみてくださいね!
▼MAISON & OBJET HP
https://www.maison-objet.com/paris/visiter/forum-digital/index.htm
Maison & Objet 2023(9月展) の見どころ
最新トレンドの発信源となるWHAT’S NEWの展示や、今回の展示から新たに追加されたセクター「ウェルビーイング」など9月展の見どころを一挙ご紹介いたします!
WHAT’S NEW?
今シーズンのスポットライトは「Nature and Joy(自然と喜び)」
トレンドハンターとして知られる、Elizabeth Leriche(エリザベス・ルリッシュ)とFrançois Delclaux(フランソワ・デルクロー)が、出展者のコレクションの中から「WHAT'S NEW?」と題して「今」を反映するキープロダクトをピックアップ。
それぞれ異なるアプローチで、「PATTERN FACTORY(パターン・ファクトリー)」と「WONDER NATURE(ワンダー・ネーチャー)」という2つの展示を行っていました。
今シーズンのスポットライトは、Nature and Joy(自然と喜び)!
- PATTERN FACTORY By Elizabeth Leriche
Maison & Objetが提案する今シーズンのテーマ 「ENJOY」にインスパイアされたPATTERN FACTORYの展示は、さまざまな形、色、デザインが楽しく組み合わされています。
床から天井まで覆われた強烈なパターンが組み合わされた催眠的で楽しい回廊を進むと、アート、エスニック、都市、庭、ポップなど、「喜び」のモチーフがミックスされた5つの異なるデザインのスタイルが、それぞれのテーマに沿って展示されていました。
壁に貼られていたQRコードを読み取ると、展示の説明をする音声ガイドをダウンロードすることができたので、それを聞きながらじっくりと展示を楽しむことができました(美術館の音声ガイドみたいな感じです)。
しっかりと、音声でも説明を聞きながら展示を見ると、理解が深まりますよね。
このような、展示にまつわる表現方法も、少しずつ進化しているなあと感心してしまいました。
では、PATTERN FACTORYで提案されていた、5つのシーン(スタイル)をみてみましょう。
・URBAN GRAPHIC(アーバン・グラフィック)
建築とオプ・アートにインスパイアされた、催眠的なストライプ・パターンで活気あふれる空間
※オプ・アート:オプティカル・アートの略称。広い意味での騙し絵(錯覚など)の一種で、特殊な視覚的効果を与えるよう計算された絵画作品ジャンルのこと。幾何学的な抽象作品を指すことが多い。
・FLORAL POP(フローラル・ポップ)
花柄、ストライプ、チェックを組み合わせた陽気で気まぐれな世界
・ETHNIC CHIC(エスニック・シック)
トーテミックなフォルム、プリイティブなモチーフ、野生の生き物たちを組み合わせた、アフリカとアジアを結ぶ文化の融合
・EDEN GARDEN(エデン・ガーデン)
ヤシの木と珍しい動物、トレサージュや格子、カモフラージュ、幾何学模様をミックスした緑豊かなジャングルからインスパイアされたスタイル
・ARTY SEVENTIES(アーティー・セブンティーズ)
所々に散りばめられた、自由なフォルムとブラッシュ・ストローク(勢いのある筆の動き)、そこにスタイリッシュでジオメトリックな形を組み合わせた、表現主義的な世界観
モノの制作過程や、バックグラウンドの魅力が重要視される価値観
また、上の5つのシーン展示の他にも、これらのパターンや生地の制作過程やインスピレーション源が丁寧に紹介されている展示エリアもありました。
この強烈に華やかでカラフルなパターンの組み合わせなどを見ていて感じたのは、自分の好みや個性を大胆に表現することができる、自分を解放していいんだというメッセージです。
他人の影響に左右されず、自分が心地よいと感じる空間を創りたいという欲求が強調されています。
自分の好きなものに囲まれ、その環境からポジティブなエネルギーを受け取ることが、豊かな生活環境の要素なんだなと感じます。
そして、制作されている「過程」も非常に重視されており、よりジェニュイン(誠実、本物)であることが、そのモノの価値として付加されていると感じました。
モノの背景にあるストーリーや工夫にも価値を見出し、それらをリスペクトする。
素敵な外見だけではなく、そのモノ自体やデザインの裏側にあるものに対する愛着を大切にしている姿勢が、とても今っぽい価値観なのですね。
2.WONDER NATURE By François Delclaux
François Delclaux(フランソワ・デルクロー)が今回提起したテーマは、「WONDER NATURE」。自然物をモチーフに取り入れているものを主軸にアイテムをピックアップしています。
テーマは「At peace with nature (自然との調和)」
「自然との調和を取り戻すため、植物との新しい結びつきが重要であり、都市で生活する人々は緑と花を求め、これが幸福につながると認識しています。これにより内面の調和が追求され、生活環境にもポジティブな影響を与えている。」というテーマで集められた新作アイテムがずらりと揃い、今の雑貨のトレンド感が伝わってくる展示でした。
展示されているプレートを制作している、アーティストのVeronique Joly-Corbin(ヴェロニク・ジョリー=コルバン)氏がちょうど展示を見にきていました。
日本が大好きで、日本の風景を描いた作品も作っているそうです。
普段だったら直接話を聞いたりするチャンスのない世界中のアーティストやデザイナー、職人さんなどと、こうやって気軽に話すことができるのも、Maison & Objetの楽しみの一つ。
ウェルビーイングエリア
今回から新しく追加されたウェルビーイングのエリアでは、体験型のイベントがいくつか開催されて人気を博していました。
↑(写真左)「あなたのオーラを現す」というもの、(写真右)メディテーションなどの体験エリア
ウェルネスの重要性は、現代の生活に不可欠で、今やすべての業界に影響を与えています。すべてのブランドはウェルネスを考慮して製品やサービスをデザインし、人々のリラックスやケアへのニーズに共鳴する必要があるということですね。
すでに、エコ素材やリサイクルなどで環境に配慮するというのは、多くの企業が取り組んでおり、もはや当たり前のようになってきています。
しかし、今回ウェルビーイングのエリアをまわってみて、人々の関心はウェルネスや精神性という次の段階に入っているように思いました。
今後、ますますこの分野が発展していきそうな予感です。
DESIGNERS OF THE YEAR(デザイナーズ・オブ・ザ・イヤー)
今年最も輝いていたデザイナーをMaison & Objetが選出する、Designers of the year(デザイナーズ・オブ・ザ・イヤー)。
今年の受賞者、デザインスタジオMuller Van Severen(ミュラー・ヴァン・セヴェレン)は、ベルギーのFien Muller(フィーン・ミュラー)とHannes Van Severen(ハネス・ヴァン・セヴェレン)のデザインデュオ。
今回のMaison & Objetでは「Cocoon(コクーン)展」と呼ばれるユニークな展示をしており、彼らのカラフルでアバンギャルドな世界を垣間見ることができました。
作品たちは工業素材と豊富なカラーパレットで構成され、革新的でミニマルなデザイン、美的な価値と実用性の両方を持ち合わせています。
RISING TALENT AWARDS(ライジング・タレント・アワード)
Philippe Starck(フィリップ・スタルク)が審査委員長をつとめ、有望な若手デザイナーを選出する「RISING TALENT AWARDS(ライジング・タレント・アワード)」は、フランス人デザイナーのTim Leclabart(ティム・レクラバート)が受賞しました!
芸術的でありながらも実用的でどこかトラディショナルな雰囲気も漂う彼の作品たちは、まさにこのアワードにぴったりでした。
PICK UP!今シーズンの気になるトレンドキーワード
ここからは、JIAS ONLINE的に気になった今シーズンのトレンドキーワードをランダムに発表していきます。
曲線がポイント!洗練されたリラックス空間が旬
全体的にあたたかみがあり、ほっとする雰囲気ながらも洗練されたリラックス空間。ソファやテーブル、そして収納にも起用されている様々な曲線が印象的でした。
差し色として使われているカラーも、都会的でいて全体と調和する優しい色味で、リラックスムード漂う雰囲気が旬なようです。
コテージコア
素朴でリラックスできる素材をに使用した、どことなく懐かしく、あたたかみのあるインテリアたち。
エフォートレスでリラクシーな雰囲気のコテージコア的なスタイルのものも多く見られました。
木目などの素材感がわかるようなマテリアルが特徴的で、それらに合わせる照明や小物などにも天然素材が使われている点がポイントです。
ブラウンを基調としたナチュラル系の仕上がりながらも、どこかノスタルジックな雰囲気が魅力です。
オリエンタルなカラーパレットとモチーフ
アニマル柄や果物などの象徴的でダイナミックなモチーフを取り入れた、ユニークなスタイル。
どこかオリエンタルな雰囲気も漂うインテリアたちはアートのようでありながらも、一つの空間の中で調和しています。
今回は魅力的な秋らしいカラーがうまく組み合わされていました。
大きなプロダクトに取り入れられた、セラミックや大理石・テラゾー素材
今までも、食器やオブジェなどの小さめのもので人気があったセラミックや大理石、テラゾー素材(人工大理石)。今シーズンからはテーブルなどインテリアのメインになるような、大きめのものに使われているプロダクトに目を惹かれました。
ミニマルなデザインにこれらの素材を組み合わせる、あからさまではない贅沢さを楽しむ遊び心がインテリアを今っぽく見せます。
シックな雰囲気のガラス素材
キラキラ美しいガラス素材は先シーズンから注目されていましたが、今シーズンはヴィンテージのようなスモーキーな風合いを持ったガラス素材が、カラフルながらもシックに使われています。
今シーズンのインテリアデコレーションには、スモーキーなガラス素材がマストアイテムとなりつつあると感じます。
↑花瓶などのアクセサリーだけでなく、コーヒーテーブルや椅子などのサイズ感のものも。
神秘的なモチーフ
今シーズンは、非物質的な要素からインスピレーションを得た、よりマインド的な部分にアプローチするようなプロダクトが注目されていました。過去数年間、占いや占星術が再び注目を集めてきましたが、今シーズンは特に大きなインスピレーション源となっています。
エネルギーを高めてくれそうなクリスタルやホワイトセージなどがミックスされたアロマキャンドル、タロット、占星術の世界がデコレーションのトレンドとして浮上しています。
神秘的で、どことなくあたたかな癒しの魅力を持つプロダクトがインテリアのポイントに。
↑世界各地の呪文にインスピレーションを得た香りのキャンドル(写真左)、12星座からインスパイアされたキャンドル(写真右)
Waww la table(フランスのテーブルウェアの愛好家グループ)のテーブルセッティングにインスピレーションを与えるコーナーでは、タロットカードからインスパイアされたプレートのセットを紹介していました。
実はこちらのプレート、とても面白い仕掛けがありました。プレートの模様部分をスマートフォンでスキャンすると、お皿の上にタロットの妖精(?)が出てきて、今日の運勢をタロットカードで教えてくれるのです!
▼スキャンすると、タロットカードが出てくる様子
https://drive.google.com/file/d/1cqk3q69LWvJfajamETeijbc55TbXnl8q/view?usp=drive_link
展示コーナーの奥には、なんと実際に占い師に占ってもらえるスペースも。
海外と日本では「スピリチュアル」という言葉に対する認識が微妙に異なることもあり(日本では若干の怪しさを感じるニュアンスもありますよね...?)、意外とポピュラーな存在なのです。
おわりに
今回は、パリで開催されたメゾン・エ・オブジェのレポートをお届けしました。なんとなく今年のトレンドや雰囲気が伝わったらいいなと思いますが、いかがでしたでしょうか。
ボリューム満載のコラムですが、最後までお読みいただきありがとうございました。
ここで出会った素敵なアイテムを、秋冬に向けてJIAS ONLINEに入荷していきますので、楽しみにしていてくださいね!
ではまた次回。