
トレヴィーゾ便り #9「イタリアの食卓に欠かせない存在|国民食のPIZZA ピッツァ」
みなさん、こんにちは。トレヴィーゾ在住のミナミです。
イタリアでは長い長い夏休みが終わり、子どもたちは9月から新学期。
日本でたとえると、4月の入学シーズンのような感覚で、ワクワクドキドキの1年がスタートです!
さて、秋といえば「食欲の秋」ですよね。
イタリアでも、ポルチーニ茸や栗、ナッツ類など旬の食材が市場に並び始め、美味しいものがたくさん楽しめます。
そんな食欲の秋にぴったりなのが、老若男女問わず愛される国民食、「ピザ」です。
今回は、イタリア人の生活に深く根ざしたピザの文化や歴史、美味しい食べ方についてご紹介します。
ピザの原点を訪ねて

ピザは今や世界中で親しまれている料理ですが、その原点はイタリア南部の都市、ナポリにあります。
ナポリといえば、トマト、モッツァレラチーズ、バジリコ(バジル)を使ったシンプルなピザ「マルゲリータ」の発祥地。
1889年、イタリア王妃マルゲリータのために作られたこのピザは、イタリア国旗の色を表現しており、今でも「伝統と誇りの味」として愛されています。
しかし、ピザの歴史はさらに古く、古代ローマ時代の「フォカッチャ」や、古代ギリシャの平焼きパンにまでさかのぼるといわれています。
小麦粉を練った生地にオリーブオイルを塗り、ハーブやチーズをのせて焼くという、まさにピザの原型ともいえる食べ物は、この頃から存在していたのです。
イタリア人にとってのピザは家族の味、日常の味

ピザはイタリア人にとって、特別な日だけでなく、日常にも深く根付いた食べ物です。
週末になると、「今夜はピザにしようか」と話す家庭も少なくありません。
ピザを囲む夜は、イタリアの家庭ではちょっとしたイベント。
サッカー中継や映画を楽しみながら、家族団らんの時間を過ごす定番になっています。
また、子どもたちの誕生日会や学校のイベントでも、ピザは欠かせません。
外食時のピザは1人1枚が基本。「シェアしない」文化

日本の場合、レストランでピザを注文したらみんなで分け合うことが多いですよね。
イタリアでは、レストランやピッツェリア(ピザ専門店)でピザを頼むとき、「1人1枚」が基本。
丸ごとのピザが1人分として提供され、カットされていないことも珍しくありません。
誰かとシェアすることはほとんどなく、自分の選んだ1枚を最後までゆっくり味わうのがイタリア流。
小さな子どもたちも、それぞれ好きなピザを1枚ずつ注文します。
もし食べきれなくても、残りを持ち帰って次の日に食べるのが定番です。
この「シェアしない文化」は、「自分の好みは自分で選び、責任を持つ」というイタリア人の個人主義がよく表れているともいえるでしょう。
地域によって異なる、ピザの多様なスタイル
イタリア国内には、地域ごとにさまざまなピザのスタイルが存在します。
それぞれの土地で異なるピザのスタイルに、どのような違いがあるのか、詳しく見ていきましょう。

●Pizza Margherita alla Napoletana ピッツァ・マルゲリータ・アッラ・ナポレターナ
イタリアの定番であるナポリ風ピザは、ふっくらと盛り上がった縁(コルニチョーネ)が特徴です。
高温の薪窯で約90秒という短時間で一気に焼き上げることで、外はカリッと香ばしく、中はもっちりとした絶妙の食感に仕上がります。
また、生地は最低でも24時間以上かけてじっくり発酵させるため、グルテンが分解され、消化にも良いとされています。
※グルテン……小麦に含まれるたんぱく質。水と混ざると粘り気のある網目状の消化酵素によって分解されにくい構造を作る。

●Pizza Bianca ピッツァ・ビアンカ
トマトソースを使わず、チーズをベースにしたピザは「ピッツァ・ビアンカ」と呼ばれます。
「ビアンカ」はイタリア語で「白」を意味し、その名の通り白い見た目が特徴。
トマトソースの酸味がなく、あっさりとした味わいを楽しめます。
個人的には、生ハムとズッキーニの入ったものがおすすめです。

●Pizza alla Romana ピッツァ・アッラ・ロマーナ
一方、ローマで主流なのがローマ風ピザです。
ナポリピザとは対照的に、生地が非常に薄く、パリッとしたクリスピーな食感が特徴です。
生地が薄いため、具材の味がよりダイレクトに感じられます。

●Sfincione スフィンチョーネ
シチリア島・パレルモの郷土料理で、分厚い生地が特徴です。
英語で「厚いスポンジ」を意味し、その名の通り、外はカリカリ、中はふわふわの食感。
オーブン皿で焼かれることが多く、トマトやチーズのほか、ナス、オリーブ、玉ねぎ、アンチョビなどをたっぷりと使い、濃厚な味わいを楽しめます。

●Pizza a Taglio ピッツァ・ア・タリオ
旅先で気軽にピザを楽しみたいなら、ピッツァ・ア・タリオ(切り売りピザ)がおすすめです。
長方形のピザを好きなサイズにカットし、重さで量り売りするスタイルです。
スーパーやパン屋、街角の専門店などでよく見かけます。
紙に包んでその場で手軽に食べたり、ホテルに持ち帰ってゆっくり味わったりするのも良いですね。
このように、ひとくちに「ピザ」といっても、食感、見た目、焼き方、トッピングは驚くほど多様です。
ピザは、まさにイタリア各地の個性豊かな食文化を映し出す鏡のような存在といえるでしょう。
小腹が空いたらおすすめ PIZETTA ピッツェッタ

ここでぜひ紹介したいのが「ピッツェッタ(pizzetta)」です。
ピッツェッタとは、「小さなピザ」という意味。
パン屋やバールのショーケースに並んでおり、朝から夕方までいつでも気軽に食べられます。
手のひらサイズの生地にトマトソースとチーズがのったシンプルなものが定番ですが、ハムやズッキーニ、オリーブなど具材のバリエーションも豊富です。
学校帰りのおやつや、仕事の合間の軽食として、また誕生日パーティーなどでも欠かせない、イタリア人にとって身近な存在です。
家で楽しむ手作りピザ

もちろん、家で手作りピザを楽しむ人もたくさんいます。
スーパーには、すでに発酵済みのピザ生地や、トマトソース、モッツァレラチーズなどがセットになった手軽なキットが販売されており、子どもと一緒にトッピングを楽しむことができます。
イタリアの家庭のキッチンには、大きなピザを焼けるオーブンが備え付けられていることが多く、生地からこだわって手作りする人も少なくありません。
友人の家で何度もご馳走になった手作りピザは、格別な美味しさでした。
この場合は、外食するときと違って、大きなピザをみんなでカットしてシェアします。
家庭のオーブンで作るピザは、長方形なのが一般的です。
お持ち帰り、宅配ピザ
近年は、宅配アプリの普及により、ピザの楽しみ方にも変化が現れています。
地元のピッツェリア(ピザ専門店)の味が数クリックで自宅に届くようになり、若者を中心に、アプリでの注文・決済が主流になっています。
このスタイルは、日本でもおなじみですよね。世界中どこでも便利さが進んでいることを感じます。

目の前に広がる山の景色を眺めながらいただくピザは格別です。イタリアでは、ピザとビールは定番の組み合わせです。

ちなみに我が家でよく注文するピザ屋は、長さ50cm×幅1mの巨大サイズ。
丸いピザの約4~5枚分に相当し、5人家族の我が家にはちょうどいいボリュームです。
これで30ユーロ(日本円で約5,000円)ほど。
週末や旅行帰りで自炊をしたくないとき、友人が遊びに来たとき、誕生日パーティなど、さまざまなシーンで活躍するメニューです。

さいごに

ピザは、イタリア人の生活に深く根ざした、日常でありながらも特別な意味を持つ料理です。
今回のコラムで、ピザについての新たな発見はありましたでしょうか?
もしイタリアを訪れる機会があれば、ぜひいろんな場所でピザを試してみてください。
それぞれの街の個性や文化を、ピザを通して感じられるはず。
それでは、また次回。